飲食店の独自ホームページって、必要?
「今度の飲み会、すまないが幹事をやってくれないか。10人程度は入るところで、落ち着いた雰囲気で、料理が美味くて・・・とにかく、よろしく頼むよ」
あなたがもしも、上司や友人からこのような依頼を受けたとしたら、どうするでしょうか。恐らく、ほとんどの人が「食べログ」や「ぐるなび」といった飲食店情報サイトにアクセスすることでしょう。場所や予算、その他の条件から絞り込んでいって、時には幾つか候補を比較しながらお店を探すはずです。大手検索サイトのGoogleは、そんな私達の行動をお見通しのようです。試しに、「新宿 洋食」や「赤坂 ラーメン」と検索してみましょう。上位のほとんどに飲食店情報サイトのページが表示されるはずです。私達が新宿の洋食屋さんを探す時、そのようなページに誘導することがベストであることをGoogleは知っているのです。
飲食店情報サイトの多機能化は目覚ましいものがあります。充実した検索機能はもちろん、料理のテイストやお目当ての場所に近い別のお店を紹介してくれる機能まであります。まさにコンシェルジュ、「こういうお店がいいなあ」といったぼんやりとしたイメージだけでも、Webサイトを辿っていくうちに様々なお店の情報と巡り逢えるようになっています。
そんな状況の中で、あえて飲食店それぞれが独自でホームページを作る意味があるのでしょうか。どうせユーザーはみんな食べログやぐるなびを見るんだし、Googleの検索だって上位表示が難しいし・・・考えれば考えるほど、いらないような気がしてきませんか。
しかし、ユーザーのニーズをより深く考えてみれば、飲食店が独自でホームページを持つことの有益性に気付くことができます。今回は2パターンのケーススタディを通して、その意味を見つけていきましょう。
case.1 Aさんの場合/どうしてもハズせないプロポーズ
Aさんには、3年間交際している女性がいます。男としてのけじめをつけるべく、Aさんは遂にプロポーズをする決意を固めました。場所は彼女の好みに合わせてイタリアン。一世一代の大勝負、絶対に、絶対にハズせないお店選びが始まりました。
とはいえ、年頃の男子にとってお店選びなんてお手のもの。Aさんは飲食店情報サイトのアプリをさっと起動して、慣れた手付きで幾つか候補のお店を選びました。
それぞれのお店の紹介ページを見る限り、場所や雰囲気はバッチリ。評価点も比較的高めです。しかしユーザーレビューを読み込んでみても、どのお店も何となくは良さそうな感じがするものの、これといった決め手がありません。間違いなくこのお店、という確信が欲しいAさんでしたが、当たり障りのない褒め言葉が並ぶレビューを読むにつれ、なんだかどこもイマイチな気がしてきました。Aさんは、途方に暮れました。
そんなとき、あるお店が独自のホームページを持っていることが分かりました。試しにそのホームページにアクセスしてみると、そこには飲食店情報サイトに掲載されていないような情報が広がっていました。
まず、そのお店は、毎日仕入れた魚の情報をトップページに掲載していました。「今日はこの魚の状態が良いからオススメ」など。どうやら店主がマメに情報発信を行っているようです。
続いてお店のコンセプトが書かれているページを見たとき、Aさんはようやく救われたような思いがしました。「大切な人との大切な時間に寄り添いたい。特別な演出・サプライズなど、お気軽にご相談下さい。」Aさんはすぐにそのお店に連絡し、来たるべきプロポーズの打ち合わせを始めました。
case.2 Bさんの場合/「馴染みの店」の探し方
とある地方都市で長年勤めていたBさんに、東京への転勤の知らせが舞い降りました。足繁く通った”馴染みの店”に別れを告げ、新天地に降り立ったBさん。仕事ももちろん頑張りたいけれど、そのためには羽を伸ばせる居場所が欲しいものです。新たな街で、新たな”馴染みの店”探しに意欲を燃やしています。
しかしここは大都会・東京、お店の数も地方とは比べ物になりません。せっかくならマスターや常連と趣味が合って、いつ行っても居心地が良いところ・・・そんな風に思いながら、Bさんは一通り近所の飲み屋をリストアップし、気になったところから1つずつ訪ねてみることにしました。
一軒、二軒、三軒。調べては足を運び、また調べては足を運ぶ生活。しかしいくら繰り返しても、中々しっくりくるお店が見つかりません。というよりも、数回飲みに通った程度ではどんなお店なのか分からないものです。これだけ多くの選択肢があるのだから、本当に自分が好きなお店を見つけたいけれど、かといって手を広げすぎてもちんぷんかんぷんになってしまう。Bさんはそんなジレンマを感じ始めていました。
あり日の晩、Bさんはふと思いつきました。
「もしかして、お店のtwitterを見れば大体の雰囲気が分かるんじゃないか?」
その狙いは的中しました。Bさんがこれまで通った幾つかのお店がtwitterアカウントを持っていて、それぞれのお店の日常をつぶやいていました。開店と閉店の時間のみを告げるものから、店主のこぼれ話を配信しているところまで、その内容は様々でした。
Bさんはしばらくの間、それぞれのお店のツイートを眺めていました。すると、あるお店のつぶやきが気になるようになりました。
どうやらそのお店の店主は釣りが好きなようで、先日行った海の話や、釣った魚の写真などが配信されていました。察するに、お店の常連さんともしばしば釣りに出掛けているようです。飲み仲間と同じぐらい釣り仲間も欲しかったBさんは、わくわくしながらツイートを追っていきました。
そのお店への興味が尽きないBさんは、Googleで店名を検索してみました。するとお店のホームページがヒット。決して派手なホームページではありませんが、「店主の釣りブログ」や「ホームページを見た人限定!裏メニューのまかない飯」はBさんの気を引くのに十分でした。以前通った時は寡黙そうなおやじだったのに、せっせとホームページを更新している姿を想像すると、なんだか応援したい気持ちすら湧いてきました。
結果、Bさんはそのお店に通うようになりました。今ではすっかり常連となり、「店主の釣りブログ」にも度々登場しています。
いかがでしょうか。
ホームページを作ったとしても、それが食べログやぐるなびの丸写しであれば、確かに飲食店の独自ホームページは不要かも知れません。しかし、細かなこだわりが見える情報や、SNSと連動した更新コンテンツなど、飲食店情報サイトでは伝えきれない情報を掲載できるのであれば、飲食店の独自ホームページも十分に作る価値があります。
むしろ、今ではどのお店も飲食店情報サイトに登録されているのですから、他のお店との比較から抜け出すツールとして、飲食店の独自ホームページは今後より一層重要性が増していくのかも知れません。
ユーザーは、値段や場所といった情報よりも多くのことも知りたがっています。そのニーズを丁寧にキャッチして、”常連さん”の発掘につながるようなホームページを作成しましょう。
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