Webサイトの著作権
2017.05.29
独立したてのころ、私がWebサイトで公開していた動線設計に関するレポートを読んでくれた関西のS社から、「うちのWebサイトを何とかして欲しい」とご依頼をいただきました。
S社は、ずっと公共事業をメインにビジネスを展開してきたメーカーで、2004年当時、公共事業予算がどんどん少なくなっていき、自分たちで新たな顧客開拓をしたいということでした。
Webサイトはあるにはありましたが、あくまで会社案内としてのもので、全く集客などを考慮していませんでした。当然反響も無かったのです。
■仕事を始めるにあたって、詳しくS社にヒヤリングをしていくのですが、その際にサイトを作ってくれた大阪の制作会社に、サーバ費用と更新運用(といってもお知らせをごくたまに更新するくらい)に月額3万もの費用を払っていることが判明。
これは高すぎるので、すぐに解約して、新しいサーバにデータを引越しましょうと勧めました。
FTPのアカウントも知らされていなかったので、その大阪の制作会社にサイトのデータ一式をもらうか、FTPのアカウントを教えてもらってくださいと言いました。
S社の人も「その大阪のWeb制作会社の担当者さんはすごく良い人なので協力してくれるはず」なんて言っていたのです。
■そうしたら、とある日の夕方頃に、その大阪の会社から私に電話がかかってきました。
「おたく、何やっとんの?うちの顧客奪うってどういうこっちゃ。泥棒猫のような真似しよって。写真や原稿の著作権はこっちにあるんだ。そんな真似させへんで」
少し年上のドスの効いた声で、かなり激しい口調。
う〜ん、怖いなぁ・・・
言い争いしたくないなぁ・・・
ただ、この人の言っていることは一部間違っています。
日本では、著作権は、その著作物を作った人に自然発生的します。
このWebサイトの写真や原稿はS社の担当者が一生懸命作ったものだから、写真や原稿の著作権そのものはS社に帰属します。
百歩譲って、その大阪のWeb制作会社に権利があるとしたら、Webサイトのデータそのものについてです。
私は、足震えながら(^^;そのことを電話の向こうの相手に伝えましたが、
「つべこべ言うな。とにかく、データは渡さん。」
(ガチャっ!)
ということで、そんな会話があったことをS社に伝え、今回、データの移行は諦め、先に最低限の部分だけでもWebサイトを作り、早く今のWeb制作会社と手を切るようにしました。
(その後、ドメイン移管の件でも少し面倒がありました・・・)
■Webサイトの著作権については、何となく分かっているようで分かっていない人が多いです。
まず、掲載されている写真や原稿は、基本的に作った人に自然発生します。これを「無方式主義」と言います。
日本を含め、先進国はほとんどが無方式主義です。
但し、この人が会社業務として作った場合は、この人が所属する会社に著作権があります。
これを「法人著作」と言います。
これが著作権の基本です。
■よって、Webサイトの写真や原稿そのものは、その写真を撮ったり、原稿を書いた人・会社のものだし、その写真や原稿を使って作ったサイトのデータは、何もしなければWeb制作会社に帰属します。
だから、受発注にあたって契約書が必要なのです。
普通、契約書には、自由な使用許諾を発注側に与える文言があります。
当社でも、Web制作をする際に、クライアントに申込書を書いてもらいますが、そこにもその旨が記載されているし、当社が外部の協力会社に作業を発注する際にも、同様の文言が入っています。
Web制作業界は、こういうところがいい加減な業界なので、きちんとこのような契約をしない会社も多いです。
こういう話を一番しやすいのが契約時です。
後々問題が起きないように、契約時にきちんと明確にしておきましょう。
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山浦 仁 / ウェブラボ株式会社 代表取締役
大学卒業後、大手Web制作会社にてWebディレクターとして数多くの国内大手企業のプロジェクトに携わる。2004年にウェブラボを設立。2007年には中小企業向けのWeb制作ノウハウとCMS機能をパッケージにした「サイト職人CMS」を発表。現在は、中小企業だけでなく大手企業からの引き合いも多く、Webコンサルタントとしても活動中。上級ウェブ解析士。全日本SEO協会認定コンサルタント。