ドラッカー本との出会い
2022.07.16
私はよく書籍を購入するので、定期的に読まなくなった本を処分しています。その中で、ずっと処分されずに残っている本は少ないです。その少ない中に、ピーター.F.ドラッカー氏の本があります。言わずもがな、ドラッカーは「経営学の父」と言われた偉大な学者でありコンサルタントです。
ドラッカー氏の書籍を読み始めたのは、起業して2〜3年した頃です。その頃、クライアントだった地方のとあるお客さんと昼食をとっていた時に、お客さんから薦められたのがきっかけで読み始めました。
お客さん:「最近どんな本読んでるの?」
私:「かなりの数読んでるのであまり特定の人はいないですけど、やっぱりマーケティング関連の本が多いです。最近は、いわゆるノウハウ系の本はあまり得るものが無いので読んでません。コトラーの分厚い本とかがんばって読んでます(笑」
お客さん:「そっか。確かに最近ノウハウ本流行ってるけど内容薄いもんね。コトラー、イイねぇ。でも俺はやっぱドラッカーかなぁ。」
私:「ドラッカーって読んでみたいとずっと思ってたんですけど、いっぱいあってどれから読んでいいか分からなくて・・・」
お客さん:「ドラッカーの本は、基本的に論文をまとめたものだから、興味のあるものから読めば!?とにかく深いよ。そこがいい。」
そう言われてしまうと、もう読まずにはいられません。
まず真っ先に買ったのが『イノベーションと起業家精神』という本です。それから『経営者の条件』『創造する経営者』『現代の経営』と、ドラッカー経営書の三大古典を読み、ちょうどその頃発刊された『テクノロジストの条件』も読みましたし、以前、このコラムでも書きましたが、『プロフェッショナルの条件』は、当社の研修で使っています。
ドラッカー経営書は、基本的にハーバードビジネスレビューとかの論文をまとめたものなので、一般の書籍のように、一冊を通して1つの結論を述べるというスタイルではありません。
たとえば、『イノベーションと起業家精神』という本には、イノベーションや起業家精神ということに関して書かれた論文が集まったものです。そう書くと、寄せ集め論文集のように感じますが、全く寄せ集め感など無く、考察しやすいように上手に編集されていて、しかも最初から最後まで非常に内容が濃ゆ〜くなっています。
ドラッカー経営書の凄いところは、それぞれ読む人によって、それぞれ必要な洞察を得られるというところです。ドラッカー経営書というと、大企業の経営者向けというイメージのある方も多いかもしれませんが、全てのビジネスパーソンが読んでいろんなヒントが得られるのです。
たとえば、どんどんいくつも事業を起こしていくような起業家であれば
イノベーションとは、既存の知識、製品、顧客のニーズ、市場などすでに存在するものを、はるかに生産的な1つの全体に発展させるために、小さな欠陥を発見し、その提供に成功することである。」
(『創造する経営者』より)
という言葉にインスピレーションが刺激されるはずです。
既にある程度の規模の事業を行っている経営者であれば
数年ごとに、あらゆるプロセス、製品、手続き、方針について、「もしこれを行っていなかったとして、今分かっているすべてを知りつつ、なおかつ、これを始めるか」を問わなければならない。もし答えがノーであれば、「それでは今、何を行うべきか」を問わなければならない。そして行動しなければならない。「再検討」などとは言っていられない。それどころか今後ますます組織は、成功してきた製品、方針、行動について、その延命を図るのではなく、計画的な廃棄を行わなければならない。
(『プロフェッショナルの条件』より)
という言葉に自社に必要なものを見出すかもしれません。
いわゆるノウハウ本のような安易なやり方を示すようなことはしません。時には耳の痛いこともいっぱい書いてありますし、集中して読まないと理解できないところもあります。しかし、読んでいるとたくさんの気づきがありますし、自分はなぜ仕事をするのか、事業を行っているのか、そしてそれにどんな意味があるのか、とても考えさせられます。そして、しばらく置いてからまた読んでも、以前読んだ時とはまた違う気づきがあったりします。その辺が、ファーストリテイリングの柳井会長をはじめとする大経営者にもファンが多い理由なのだと思います。
読んだことがないけど、何か読みたいと思ったら、定番は「マネジメント[エッセンシャル版]」ですが、ドラッカーの本は本屋に行けば必ずあるので、パラパラ立ち読みしてみてみて、ピンときたもの、その時の自分が欲するものから読んでみるのが私のオススメです。
関連記事こちらの記事も合わせてどうぞ。
山浦 仁 / ウェブラボ株式会社 代表取締役
大学卒業後、大手Web制作会社にてWebディレクターとして数多くの国内大手企業のプロジェクトに携わる。2004年にウェブラボを設立。2007年には中小企業向けのWeb制作ノウハウとCMS機能をパッケージにした「サイト職人CMS」を発表。現在は、中小企業だけでなく大手企業からの引き合いも多く、Webコンサルタントとしても活動中。上級ウェブ解析士。全日本SEO協会認定コンサルタント。