Webサイト制作ディレクション実務の思考手順
2020.02.03
今日は、部下が、近年Webサイトから成果が出なくて困っているクライアントを担当することになり、いろいろと試行錯誤しているので、その社員に向けて書きます。
きっとこのブログの読者の方にもご参考になると思います。
■まずWebサイトは、その企業の戦略(進むべき方向性・シナリオ)があって、それを実行していくための戦術(手段)の一つです。
ですので、その企業がどんな戦略を持っているのかをしっかり把握して、その上で、Webを使って何を実現したいのか、どんな成果を出したいのかを把握しなければなりません。
「どんな成果を出したいか?」とクライアントに質問すると、たいていは「月に1~2件しかない問い合わせを10件にしたい」というような回答が得られることが多いです。
まずはそのような回答でOKですが、さらに、その10件の問い合わせが、全体の戦略・戦術の中で、どんな10件であることが望ましいかも擦り合わせながら明確にしていってください。ただ単にSEOで人を集めて、何でもかんでも問い合わせをさせれば良いというものでもありません。
問い合わせは増えたけど、問い合わせの質が悪くなり、結局は営業活動全体で見たときに、非常に非効率になってしまったということも往々にしてあります。
どんな人たちに問い合わせてほしいのか、その人たちが問い合わせをしてくれたときにどんな状態であって欲しいか、つまりどこまでニーズが顕在化され、どこまでその企業や商品を理解しているかを擦り合わせます。(どんな状態で営業にバトンタッチするのか)
顧客像がなかなかイメージできない場合は、逆に排除したいのはどんな人たちかを考えてみることも有効です。
■ここまで来たら、成果を出すために、どんな原因・要因が必要かを考えていきます。何事も、“原因”があって“結果”があります。欲しい結果を生むための原因・要因の種を正しく撒いていく必要があります。
既にWebサイトがある場合(Webサイトの新規制作ではなくリニューアルの場合)は、現状の望まない、もしくは物足りない結果がどんな原因・要因によるものなのか、アクセス解析などを使って情報を集めます。そもそもアクセス数が少ない、重要なページで極端に直帰や離脱が多い等、複数の原因が見つかります。
■この時、1つ注意点があります。
どうしても上手くいっていない部分にだけ注目してしまいがちですが、上手くいっている部分にも目を向けてください。なぜなら、私たちは上手くいっている部分を消さないようにリニューアルをする必要があるからです。リニューアルをしたにも関わらず、逆に以前よりも成果が出なくなったという場合は、往々にして上手くいっていた部分を消し去ってしまったことが原因です。
■ここまで来てはじめて、顧客に刺さる集客方法やコンテンツやデザインのことを考えていきます。間違っても、いきなりSEOキーワードやデザインの話ではないのです。
- 顧客はどこにいるのか(メディア)
- 何に悩んでいるのか
- Webサイトに誘導する方法にはどんなものが考えられるか
- SEOが有力な集客手段の一部なら、どんなキーワードで問題解決を図ろうとするか(問題解決の初期と後期ではキーワードが違う)
- Webサイトに訪問する時、どんな気持ちか
(きっと競合他社のWebサイトも見ている) - Webサイトでどんなメッセージが目に入ると立ち止まってくれるか
- 次に何を見せるのが自然か、
そしてその次に何を見せるのが良いか、
そしてその次に・・・・・ - 最終的に、どういう情報群やメッセージが伝われば(どういうコンテンツが揃っていれば)問い合わせしたくなるか
■よく「ユーザーの立場になって」ということを言いますが、これは第3者的にユーザーを観察するというよりは、「ユーザーと同化して同じ風景を一緒に見る」ということです。ユーザーがパソコンやスマホを立ち上げるところから想像力を働かせてイメージしてみてください。
必要があれば、カスタマージャーニーマップのようなメモを作ってみても良いですし、よりユーザーを理解するために、想定ユーザーに近い人が身近にいたらインタビューしてみるのも有効です。
■私は、Webディレクターの実力の差は、技術や知識の差もありますが、ある程度基礎的なことを身に着けた後は、こういったユーザー理解への姿勢の差、ユーザーにどれだけ思いを馳せることができるかが大きいと思っています。
頑張ってください。
関連記事こちらの記事も合わせてどうぞ。
山浦 仁 / ウェブラボ株式会社 代表取締役
大学卒業後、大手Web制作会社にてWebディレクターとして数多くの国内大手企業のプロジェクトに携わる。2004年にウェブラボを設立。2007年には中小企業向けのWeb制作ノウハウとCMS機能をパッケージにした「サイト職人CMS」を発表。現在は、中小企業だけでなく大手企業からの引き合いも多く、Webコンサルタントとしても活動中。上級ウェブ解析士。全日本SEO協会認定コンサルタント。