リスティング広告では自社名で入札すべき?
2015.01.26
毎月、リスティング広告を出しています。
自社名にも出していますが、社内から「自然検索で自社名は1位を獲れているのだから、リスティング広告で入札する必要は無い」という声があがってきました。自社名の入札は無駄なのでしょうか?
これはリスティング広告の運用において長く議論されてきた問題です。私は基本的に自社名や自社ブランド名での入札は行ったほうが良いと考えています。但し、広告運用者によって考え方が分かれる問題ですし、運用実務においては入札しないこともあります。
まず、そもそもなぜこのような問題が起こるかというと、その原因は他社の社名やブランド名にもリスティング広告を入札できるからです。広告文に競合他社の社名を入れると、商標違反になるので審査は通りませんが、広告文に入れなければ、競合他社名に入札して、自社の広告を表示させることは可能なのです。
自社名を検索してくれているユーザーというのは、自社の既存客か、成約が目前の超優良見込み客です。
ここに、競合他社によって広告を出されたら、自社が時間をこれまでかけて育成してきた超優良見込み客を目の前で獲られてしまうかもしれません。
検索エンジンの検索結果画面において、リスティング広告枠は、自然検索の検索結果枠よりもページ上部にありますから、自社名で自然検索が1位だったとしても、リスティング広告枠に競合他社がいたら、実質的には1位では無いので、必ず自社名で入札しなければなりません。
それでも、「せっかく自然検索で1位なのだから、自社名に入札するのは広告費がもったいない」という方もいますが、自社名での入札にそれほど大きな広告費は必要ありません。 自社名での入札は、きちんと広告設定すれば、品質スコアが非常に高くなります。逆に、競合他社名は、広告文に入札キーワードを入れられないということもあり、どんなに頑張っても品質スコアが全然上がりません。
だから、自社名で入札して、1位を死守しても、クリック単価は非常に安価に済む場合がほとんどです。1クリック10円を切るとうことも珍しくありません。月間トータル金額でも、思うほど大した金額ではないと思える額に収まるはずです。
さて、ここまで説明すると、よくいただく質問が次の2つです。
【質問1】
自社名に入札している会社が自社の代理店だったら、自社名での入札はしなくて良いのでは?
この質問への私の回答はやっぱり「入札する」です。
入札している代理店の種類にもよりますが、例えば、ビジネスホテルが自ホテル名で「じゃらん」などに入札されている場合を考えてみます。「じゃらん」の広告をクリックすると、「じゃらん」内の自ホテルにランディングします。
一見、何の問題も無いように思いますが、「じゃらん」に行けば、周辺のホテルや、割引実施中のホテルのバナーなどが表示されます。そこで、お客様が競合他社に流れてしまう可能性は大いにあるのです。
ですから、自ホテル名で入札をして、極力、自社サイトに流入してもらいたいと考えます。
「じゃらん」のポイントなどが目的な人は、それでも「じゃらん」の広告をクリックすると思いますが、それは構いません。そういう人には「じゃらん」経由で予約をしてもらえば良いです。
【質問2】
自社名で自然検索が1位でリスティング広告も表示されていなかったら、自社名での入札はしなくて良いのでは?
この質問への回答は、結構意見が分かれるのではないでしょうか。
私は、自然検索の結果画面の内容次第で分けて考えています。
まず、自然検索の検索結果画面に自社に対するネガティブなWebサイトや、他社でのコンバージョンに結びつくような導線のあるWebサイトが散見されるような場合です。
このような場合は、自社名での入札をした方が良いです。
入札することによって、そのようなネガティブな表示を、できるだけ画面後方に持っていけますし、リスティング広告は、自然検索の結果画面と違って、メッセージをコントロールしやすいので、自社の伝えたいメッセージを掲載できます。
次に、例えば、1位は自社コーポレートサイト、2位が自社ブランドサイト、3位に自社運営のfacebookページといった具合に、検索結果画面の自社運用のメディアが独占しているような状況を作れている場合です。
但し、この場合でも、競合他社が自社名で入札していないか、検索結果画面を毎日マメにチェックしなければなりません。 このチェック作業は思っている以上に難しいです。
リスティング広告は、地域や時間、配信端末をセグメントして配信できるからです。
東京のあなたがPCで広告が出ていないことを確認しても、競合は関西エリアでスマホ向けに広告掲載していたということもありえるのです。
いろいろ書きましたが、リスティング広告運用の実務においては、自社名に入札すべき状況であっても、全体の広告予算とその配分やクライアント社内の意向など、さまざまな理由で自社名に入札しないこともあります。
しかし、入札しないという決断の前に、「自然検索で1位だから」という理由以外にも、上に記載したようなさまざまな状況判断があるということをご理解いただき、議論した上で納得のいく決断をしてください。
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山浦 仁 / ウェブラボ株式会社 代表取締役
大学卒業後、大手Web制作会社にてWebディレクターとして数多くの国内大手企業のプロジェクトに携わる。2004年にウェブラボを設立。2007年には中小企業向けのWeb制作ノウハウとCMS機能をパッケージにした「サイト職人CMS」を発表。現在は、中小企業だけでなく大手企業からの引き合いも多く、Webコンサルタントとしても活動中。上級ウェブ解析士。全日本SEO協会認定コンサルタント。