Google AdWords「エンハンストキャンペーン」のメリット・デメリット
2013.06.25
Google AdWordsを運用しています。来月(7月)、「エンハンストキャンペーン」に自動的にアップデートされるとのアナウンスがありましたが、運用側にとってどんなメリット・デメリットがありますでしょうか?また、具体的にどのような対処をしていけば良いでしょうか?
今、スマートフォンやタブレットなど、非PC端末からのインターネットへのアクセスが急激に伸びています。「エンハンストキャンペーン」とは、簡単に言うと、そのような様々な端末への広告出稿・管理作業を簡素化することを目的とした新機能のことです。Yahoo! でも「ユニファイドキャンペーン」という名称で、同様の仕様変更がアナウンスされています。
ここで言う「キャンペーン」とは、リスティング広告を運用している人ならば分かると思いますが、リスティング広告の管理画面における最も括りの大きな広告管理単位のことです。
既にエンハンストキャンペーンは始まっていて、新規で作成するキャンペーンについては、エンハンストキャンペーンでしか設定できず、新規で従来型キャンペーンを設定することはできません。 以前に作成したキャンペーンでまだエンハンストキャンペーンに移行していないものは、7月23日に強制移行されることが決まっています。
エンハンストキャンペーンの背景
メリット・デメリットの前に、まずなぜこのような仕様変更をしようとしているのかを理解する必要があります。
これまでほとんどの人が、検索という行為を自宅や会社のPCで行っていましたが、スマートフォンやタブレットPCの急速な普及によって、同じ人が移動中や外出先などさまざまな場所で、モバイル端末などを使って検索をするようになりました。
その結果、Googleは広告を場所や端末に応じて横断的に出す必要があると判断したのでしょう。
モバイル広告できちんと成果を出そうと思うと、専用の入札単価と広告設定オプション、広告テキスト、広告タイトルが必要です。
従来型では、PCと異なる入札単価にしたい場合は、別途にモバイル用のキャンペーンを設定する必要がありました。
例えば、10個キャンペーンを設定したら、それぞれモバイル用にも10個設定するので、計20個のキャンペーンが出来上がることになります。 地域に関しても同様で、例えば、広告文は一緒でも、首都圏用と地方用で入札金額を変える為に、個別にキャンペーンを作るとします。
そうなると、PC用10個、モバイル用10個、それぞれ首都圏用と地方用と設定すると、それだけで40個のキャンペーンができあがります。
こういうのは非効率なので、1つのキャンペーンで管理できるようにしようというのが今回のエンハンストキャンペーンの主旨です。
エンハンストキャンペーンの具体的なメリット
ユーザーの利用環境やデバイスの機能に応じて、広告・サイトリンク・広告設定オプションを適切に切り替えて表示することが、1つのキャンペーンでできるようになります。
具体的には次の通りです。
- 1つのキャンペーンでモバイル向けの入札単価調整が可能に
従来は、モバイル向けの入札単価を設定する為に同じキャンペーンをモバイル用に設定する必要があった - 1つのキャンペーンで地域毎に入札単価調整が可能に
従来は、地域毎にキャンペーンを設定する必要があった - 1つのキャンペーンで広告設定オプションとスケジュールを設定することで可能に
従来は、時間帯とサイトリンクの組み合わせの数に応じてキャンペーンを個別に設定する必要があった
※今後は、特定の時間帯やスマホにのみ広告設定オプションを表示するといったことができるようになる - クロスデバイスコンバージョンの測定が可能に
スマホで検討してPCで購入したというような情報がとれるようになる
※時間帯での入札管理は今までもできたが、時間帯毎のクリックやコンバージョン率が分からなかった。今回の変更で分かるようになった。
広告設定オプションも今まではキャンペーン単位のみだったが、広告グループ単位でできるようになり、さらに曜日や時間での設定もできるようになった
エンハンストキャンペーンのデメリット
これは、多くの人が挙げているものですが、最大のデメリットは、モバイルのみのキャンペーン設定及び個別キーワードの入札ができなくなるということです。
これまではモバイル用に別途キャンペーンを設定して、個別にキーワードを設定でき、入札価格も、PCは57円でモバイルは42円というような具体的な指定ができました。
これからは、モバイルのみのキャンペーン設定は不可になり、入札価格もPCに対して○%という大雑把な指定しかできなくなります。また、モバイル用だけに除外キーワードを設定することもできなくなります。
また、品質スコアは各デバイスでの平均値になるそうです(検索ボリュームによる加重平均)。これが+に作用する業種もあれば、−に作用する業種もありそうです。
これからの対策
基本的に、PC向けにしかリスティング広告を出していない人は、そのままエンハンストキャンペーンに移行してしまって構わないと思います。
ただし、移行後もモバイルに広告を出したくないのであれば、モバイルの入札調整比が-100%になっているか確認するのを忘れないようにしましょう。
問題は、モバイルにだけ広告を出したいという場合です。
Googleの公式見解は、「これまでのようなモバイルのみターゲット設定はできなくなる」(ディスプレイネットワークに関してはできる)です。
これは、国内外問わずかなり非難されているので、もしかしたら今後、モバイルのみに広告を出す為の機能が追加されるかもしれませんが今はありません。
とりあえず、スマホ主体に広告を出す方法などは、試している方がいらっしゃるので、ご参考に。
http://liginc.co.jp/web/listing/29932
* * *
まずは、エンハンストキャンペーン移行後の管理画面に早く慣れる必要があります。
また、今回の変更は、リスティング広告史上、最大級のものなので、今後しばらくは機能追加や修正はかなり頻繁に行われると思われるので、リスティング広告運用者は、GoogleやYahoo!からのアナウンスに注意しておきましょう。
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山浦 仁 / ウェブラボ株式会社 代表取締役
大学卒業後、大手Web制作会社にてWebディレクターとして数多くの国内大手企業のプロジェクトに携わる。2004年にウェブラボを設立。2007年には中小企業向けのWeb制作ノウハウとCMS機能をパッケージにした「サイト職人CMS」を発表。現在は、中小企業だけでなく大手企業からの引き合いも多く、Webコンサルタントとしても活動中。上級ウェブ解析士。全日本SEO協会認定コンサルタント。