ターゲットは絞った方が良い!?
2020.06.28
よくターゲットを絞れと言われますが、非常に難しいと感じています。現に弊社にはいろいろなお客様がいます。
Webサイトのターゲットは本当に絞った方が良いのでしょうか?絞るのであれば、どこまで絞ったら良いのでしょうか?
一般的な企業であれば、ターゲットは絞った方が良いです。ですが、どこまで絞るか、どのように絞るかについては、文脈によって異なります。
マーケティングにおいて、ターゲットの話は主に“ポジショニング”と“クリエイティブ”の2つの文脈で語られることが多いです。
それぞれ見ていきましょう。
ターゲット設定とポジショニング
「ターゲットを絞る」ことについて語られる文脈の1つ目が“ポジショニング”上の話です。
ほとんど競合がいない市場においては、その商品・サービスを購入したい人がターゲットになると思います。でも今どき、そういう市場にお目にかかることはほとんどありません。
もしあったとしても、それまでに無かった新しい商品カテゴリという場合がほとんどです。近年であれば、スマートフォンがあります。でも、すぐに競合が現れて、アッという間に競争市場になってしまいました。
競合がいる市場においては、ターゲットを絞ることでポジショニングが明確になり、差別化につながります。 例えば、Web制作業界を見てみると分かりやすいです。
しかし、市場が成熟していくにつれて、参入が相次ぎ、今では星の数ほどWeb制作会社が存在します。Webサイトを作れるというだけでは仕事がとれません。差別化を図る必要があります。
まず現れたのが、通販会社などのECをやりたい企業にターゲットを絞った「EC専門」の制作会社です。楽天市場でのショップ構築を専門にする会社なども現れました。
その後、もっと分かりやすい差別化、「○○専門」を謳う制作会社が現れました。「工務店専門」「治療院専門」「弁護士専門」「歯科医専門」「不動産会社専門」などといった具合です。
この戦略は、効果的です。もしあなたが弁護士だったとします。デザインや技術的な制作能力が同じA制作会社とB制作会社があり、A制作会社は普通の一般的な制作会社、B制作会社が「弁護士専門」を謳っていたら、B制作会社に発注したくなるのではないでしょうか。なぜなら、弁護士のWebサイトを数多く作ってきているのであれば、経験も豊富なはずだし、きっとノウハウも持っているに違いないと思うからです。
ターゲット設定とクリエイティブ
「ターゲットを絞ることについて語られる文脈の2つ目が“クリエイティブ”上の話です。
キャッチコピーやコンテンツを考える際に、よく理想的なお客さん一人をイメージしろと言います。
例えば、育毛剤のキャッチコピーを考える時に、40代前半の男性に向けて書きなさいと言われるより、43歳の営業職で子供が二人いて、奥さんから最近「髪が薄くなってきたね」と言われ、気になりはじめたけどどうして良いか分からない山田さんに向けて書きなさいと言われた方が簡単ですよね?出来上がりのメッセージもより刺さるものになるはずです。
この考え方は、Webサイトに必要なコンテンツや原稿を作成する時も同様ですし、ユーザビリティのチェックをする際にも使ったりします。
このように、典型的なターゲットとなる一人の人物像を描くことを「ペルソナ」と言います。
ペルソナを作る際には、その人の名前(仮名でも良い)、年齢、職業、年収、家族構成、居住地、趣味、仕事、年収、愛車などを洗い出してみます。
そして、普段どんな悩みや感情をもっているのか、どんなことにやりがいや喜びを感じるのか、どういう価値観を持っているのか、何を大切にしているのか、どんな思い込みを持っているのか、を明確にしていきます。
↓ペルソナの例
ターゲット設定とクリエイティブ
さて、どう考えても、ターゲットが複数あるという場合ってありますよね?
例えば、典型的な例でいうとホテルがそうです。
一般宿泊客とウェディング、あとはレストラン利用だけの人や会議室を使いたい人などがいます。
その場合は、それぞれにペルソナを想定して、その人たちに向けたページを制作します。トップページは、それぞれのターゲットをきちんとその人達用のページに誘導することが役目になります。必然的に、トップページのメニューボタンは自社が言いたいではなくて、お客様のニーズ毎メニューになります。
リスティング広告などを展開している場合は、直接その人たちに向けたページに誘導します。
SEOの設定キーワードも、トップページに全部を盛り込むことをせず、それぞれのページに必要なキーワードを埋め込むということを行います。
もし商品もターゲットも全く異なるという場合は、無理に1つのWebサイトにまとめようとするのではなく、別サイトで展開した方が良いです。
理論的なことを書いてきましたが、理論的には分かっても、実際にやってみると不安が顔をのぞかせたりしてやっぱり難しいものです。そんな時は、こう考えてみてください。
Webサイトのコンバージョン率(お問い合わせや資料請求などの反響率)の目安は1%程度と言われています。つまり、1000人が訪問して、10人がお問い合わせをするということですが、逆に言い換えれば、残りの990人には無視されても良いということです。
この10人は「これは自分のことだ」「この商品は自分が探していたものだ」と思ったから反応してくれました。10人に刺さるメッセージを作ったから、10人が反応してくれたのです。
じゃぁ、もっと反応を取りに行こうと、100人に関係あるメッセージを作ろうとすると、10人の時よりもメッセージは具体性を欠いたものになります。すると恐らく10人よりも反応率が下がります。
99%の人には無視されてもいい!
そう考えると、少し気が楽になりませんか!?
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山浦 仁 / ウェブラボ株式会社 代表取締役
大学卒業後、大手Web制作会社にてWebディレクターとして数多くの国内大手企業のプロジェクトに携わる。2004年にウェブラボを設立。2007年には中小企業向けのWeb制作ノウハウとCMS機能をパッケージにした「サイト職人CMS」を発表。現在は、中小企業だけでなく大手企業からの引き合いも多く、Webコンサルタントとしても活動中。上級ウェブ解析士。全日本SEO協会認定コンサルタント。