値付け
2020.10.04
先日お問合せをいただいたお客様(以下Aさん)のお話です。
ちなみに、地方の案件でした。
概算の費用が知りたいということだったので、要件を聞いて、御見積を提出しました。
それから何日か経って、Aさんから「相談したいことがある」ということで、お電話とメールをいただいたのです。
Aさん: 「本当にこんな相談をして良いのかわからないのですが、山浦さん、とても話しやすくて親切なので・・・」
私: 「ありがとうございます。どのようなご相談ですか?」
Aさん: 「今、メールもさせていただいたのですが、御社ともう1社の御見積の価格に差がありすぎて戸惑っています。」
ということで、もう1社の見積書が社名が消されてた状態でメールで送られてきました。
「そっか、もう1社はかなり高い金額なんだな」と思ったら逆でした。
もう1社の方の見積が、うちが出した見積り価格の半分以下でした。
私: 「これは安いですね」
Aさん: 「そうなんです。自分の伝え方が悪くて、どちらからが間違っているのではないかと思って、こんなお願い本当に申し訳ないのですが、この見積書を見ておかしなところがあったら、ご指摘いただきたいのです。正直、今までのやりとりを通じて御社が良いと思っていたので。もう1社の御見積書、安すぎて不安なのです」
そう言われて、見積書をもう一度詳しく見ていきました。
特におかしなところも無いし、項目も網羅されています。ただ、各項目の価格が全体的にかなり安い。もしかしたら、フリーランスの人でもこの金額ではやらないのではないかという値段でした。
私: 「特におかしな箇所は見当たりません。項目の過不足も無さそうです。正直、私も驚くぐらい安いです。これは東京の会社ではなく地元の会社ですか? うちでは絶対にムリな価格です。
今回の案件は、Webサイトからの反響といった成果はいっさい問われない、ごく一般的なWeb制作です。だから、あとはこの会社の品質次第だと思います。この制作会社の制作実績などを見て、あとはきちんと作ってくれそうかどうか判断すれば良いのではないでしょうか?」
私は、思ったことを馬鹿正直にアドバイスして電話を切りました。
こんなことを書くと「ウェブラボって高いのか?」って思われそうですけど、こんな当社だって、お客様から「安すぎて不安なんだけど、本当に大丈夫?」って言われたことがあるんです。「リーズナブルな金額出してくれてありがとう」なんてしょっちゅう言われます。
値付けって本当に奥が深いと感じます。
同じ値段でも、ある人にとっては高いし、ある人にとっては安い。
ユニクロとアルマーニでは、恐らく原価はたいして変わらないのに、Tシャツの値段は何倍も違う。
もちろん多少の品質の違いがあるとは思いますが、ある人にとってはアルマーニのTシャツは高いし、ある人にとってはそれを着ることの気分も含めて適正価格なのです。
値付けによって、つながるマーケットが変わる、ということです。
価格以外の評価軸をお客さんに教えてあげる
マーケティングの大家、フィリップ・コトラー先生は下記のようなことを言っています。
もし顧客がどこのサービスも似たようなものとみなすなら、顧客は誰がそのサービスを提供しているかということより価格を重視するようになる。価格競争から抜け出すには、サービス内容とサービスの提供方法を開発し、そしてイメージを差別化することが必要となる。
つまり、価格は、お客さんにとって最もわかりやすい評価軸なので、お客さんが価格軸以外に評価軸を持たない場合は、価格勝負になってしまうということです。
あなたの会社が価格勝負じゃないなら、お客さんに、Webサイトのコンテンツやカタログ、セールスといったマーケティング活動を通じて、商品・サービスの評価軸をお客さんに伝えていかなければなりません。
例えば当社では、Webサイトのコンテンツや営業資料を通じて、Webからの反響を増やすWeb制作だったり、インタビュー集を作り込んでコミュニケーションの良い会社であることだったり、制作実績を通じてデザインレベルだったりを伝えられるように意識し、またそれを定期的に見直すようにしています。それでもまだまだ弱いと思っています。
御社は価格以外の評価軸をお客さんに与えられていますか?
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山浦 仁 / ウェブラボ株式会社 代表取締役
大学卒業後、大手Web制作会社にてWebディレクターとして数多くの国内大手企業のプロジェクトに携わる。2004年にウェブラボを設立。2007年には中小企業向けのWeb制作ノウハウとCMS機能をパッケージにした「サイト職人CMS」を発表。現在は、中小企業だけでなく大手企業からの引き合いも多く、Webコンサルタントとしても活動中。上級ウェブ解析士。全日本SEO協会認定コンサルタント。