Webサイトにおけるインクルーシブデザインとは
近年、インクルーシブデザインへの注目が高まってきています。インクルーシブデザインによって、今まで当たり前と思われてきたデザインのアプローチや方法が見直され、より多くの人に受け入れられるデザインを創造していこうとする動きが進んでいます。
インクルーシブデザインに基づいたWebサイトの設計は、社会に存在する多様性を受け入れ、しっかりと交流することに繋がります。今回は、Webサイトにおけるインクルーシブデザインとは、いったいどのようなものなのか、アクセシビリティやユニバーサルデザインなどとの違いについてわかりやすく解説していきます。
インクルーシブデザインとは
インクルーシブデザインとは、多数派のグループ層の嗜好や環境だけを考慮しデザインしていくのではなく、あらゆる多様性を考慮したデザイン手法をいいます。少し大袈裟な言い方ですが「すべての人が壁を感じることなく、製品やサービスを利用できるようなデザイン手法」といえます。
たとえば、階段ばかりの建物のデザインは、車椅子の人に不便を強いてしまうでしょう。すべての人が階段を使えるわけではありません。日常における当たり前を常に疑い、年齢や性別、人種、偏見といった思い込みを避けて、デザインしていくことがインクルーシブデザインなのです。
アクセシビリティとの違い
アクセシビリティは、インクルーシブデザインの同義語としてよく利用されがちですが、アクセシビリティとインクルーシブデザインでは、決定的な違いがあります。それは、お互いに一定の関係性は持っているものの、アクセシビリティはインクルーシブデザインの成果として得られるものであり、さまざまな背景や能力を持つユーザーに配慮し、すべてのユーザーが利用でき、恩恵が得られるデザインの実現が主な目標となります。
アクセシビリティ対応の具体的な基準は、WCAG( https://www.w3.org/WAI/standards-guidelines/wcag/ )で提唱されています。インクルーシブデザインは、これらのアクセシビリティ対応も含めたデザインプロセスを指しています。
ユニバーサルデザインとの違い
インクルーシブデザインとユニバーサルデザインでは、どのような違いがあるのでしょうか。そもそもユニバーサルデザインとは、1980年代のアメリカ社会で大量に生産された製品が障がい者のユーザビリティに配慮していなかったという課題から誕生した、可能な限り多くの人が利用できるデザインをしようとする考え方です。
一方でインクルーシブデザインは、ユニバーサルデザインの概念や原則に沿っているだけでは、障がい者や高齢者が抱える問題点が見逃されてしまうと考え、個々の人たちに寄り添い、価値観や背景をしっかりと理解したうえで、デザインしていくべきという概念であり、当事者がデザインの設計へと参加するように促すアクションなのです。
このような説明をすると、「ユニバーサルデザインの概念は、障がい者や高齢者に寄り添っていないのでは?」という声があります。この点については、着眼点が異なるためユニバーサルデザインを批判する必要はありません。なぜなら、ユニバーサルデザインは、だれでも使えることを目標に設定していく概念だからです。だれでも使えるからといって、全員が使いたいと思うとは限りません。
そのため、インクルーシブデザインの考えに従って、個々が使いたいと思うものを社会に取り入れるアクションを行ってきます。ユニバーサルデザインが「万人が使いやすい」ものであるのに対し、インクルーシブデザインは「一人一人が使いやすい」ものであると考えると、その違いがわかってくるのではないでしょうか。
なぜインクルーシブデザインが重要なのか
インクルーシブデザインへのアクションは、非常に重要です。なぜなら、多様なユーザー属性や環境に配慮したデザインによって機会損失を防ぎ、ユーザー層を拡大できるからです。これによって、今までよりも多くのユーザーが疎外感を感じることなく自分の居場所であるかのような、より優れたユーザー体験を提供できるようになります。
また、Webサイトにおいてインクルーシブデザインは、SEOに効果的といわれており、自然検索による高いアクセスアップが期待できます。現在、Googleの検索エンジンは、インクルーシブデザイン性の高いWebサイトを優遇しています。たとえば、動画のキャプションを入れたり、画像に代替テキストを入れたりといったアクセシビリティ対応は、検索順位を上げることに繋がるため、積極的にやっていきましょう。
まとめ
インクルーシブデザインは、ビジネス的な成功だけでなく、これまでとは違った新しいデザインアプローチによってイノベーションを起こす可能性があります。だれかを排除したデザインではなく、1人でも多くのすべての人が幸せになれるデザインを目指してWebサイトの改善を行っていきましょう。
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