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Web担当者も必見!生成AIと著作権

2024.06.20 Posted by

生成AIと著作権

 

近年、目覚ましい発展を遂げている生成AIは、Webサイトの制作・運営業務においても大きな変革をもたらしています。画像や文章の作成にかかるコストを削減し、効率を向上させるために、多くのクリエイターや企業が生成AIを活用しています。 デザインやコーディングなどの専門スキルがない方でもWebサイトの更新や運営ができる一方で、著作権についてしっかりと押さえておく必要があります。今回はWebサイトの管理・運営担当者に向けて生成AIを実務にどう活用できるのか、また、注意すべき著作権との関係についてわかりやすく解説していきます。

生成AIがWebサイト制作で出来ること

企画・アイデア出し

生成AIは、Webサイトの企画やアイデア出しにおいて強力なツールとなります。ユーザーが入力したキーワードやテーマに基づき、多様なアイデアやコンセプトを自動生成することで、クリエイティブな発想を促進します。例えば、新商品PRのWebキャンペーン施策やブログ記事のトピックなど、具体的な提案を行うことが可能です。

画像の作成

生成AIは、画像の作成にも利用されています。特に、アイコンやアイキャッチ画像の制作においては、高品質なビジュアルを短時間で生成することができます。作成したい画像のイメージや具体的なキーワードを入力することで、AIがこれまでの学習内容に基づいて新たな画像を生成してくれます。

MidjourneyやAdobe Fireflyなどのツールを使用することで、専門のスキルを持っていない人でもプロフェッショナルな画像を作成し、Webサイトの視覚的訴求力を高めることができます。

文章の作成

文章の作成も生成AIの得意分野です。ニュース記事、ブログ投稿、製品説明など、多様なテキストコンテンツを迅速に生成することができます。また、Webサイトを多言語で運営している場合には翻訳ツールとしても活用できます。自然言語処理技術を駆使して、読みやすく魅力的な文章を自動生成することで、コンテンツ制作の効率を大幅に向上させます。 ただし、内容の真偽については必ずしも正しいとは限らないため、生成された文章をそのまま採用するのではなく、ファクトチェックやネイティブチェックを行うことが必要です。

デザインの作成

ロゴやアイコンなど、要素が少ない単純なデザインのアイデア出しには生成AIが有用ですが、Webサイトや広告バナーなど、視覚的に高度な表現力やオリジナリティが求められるデザインに関しては、まだ力不足と言えます。

しかし、生成AIを使うことで効果的なデザイン要素やキャッチコピーについてヒントをもらえます。たとえば、「SEO会社のバナーの作成方法をアドバイスして」と質問すると、具体的なバナーサイズやカラー、効果的なフォント、注目されやすいコピーなどを教えてくれます。このように、生成AIが提供するデザインの初期案をベースに、デザイナーが手を加えることで、より洗練されたデザインを実現することが可能です。

コーディング

生成AIは、コーディングの分野でも補助ツールとして利用されています。シンプルなHTMLやCSSコードの生成には一定の成果を上げていますが、複雑な機能やデザインを伴うWebサイトの開発には、まだプロの手直しが必要です。

コーディングの知識を持った人であれば生成AIを補助ツールとして使用することで、作業効率を向上させることができます。 たとえば、「2枚の画像を左右に表示させるコーディング方法を教えて」と質問してみましょう。具体的なHTMLとCSSが表示され、作業手順についても記載してくれます。そのため、コーディングを勉強中の方は、わからないことを生成AIに質問しながら技術や理解を深めていく、という使い方もできるでしょう。

 

 

著作権の基本

生成AIを利用する際は、著作権の侵害に注意する必要があります。まずは著作権の基本についてご説明します。

著作権法とは

著作権法は、著作物の創作者の権利を保護するための法律です。創作された表現を無断で利用されないようにするための法的な枠組みを提供します。著作権法により、著作物の利用方法や範囲が定められており、創作者の経済的利益と精神的利益を守ります。

例えば自社のWebサイトとそっくり同じものが他社に無断で転用されてしまった場合、Webサイト制作に費やした時間や労力、そのWebサイトから得られる成果が不当に奪われてしまうことになります。

著作権法は創作者の権利を守り、創作活動を奨励するための重要な法制度です。同時に、著作物の適正な利用と流通を促進し、文化の発展と経済的利益のバランスを図る役割も担っています。Web担当者は著作権法を理解し、生成A Iを適切に利用することが必要です。

著作権が発生する制作物とは?

著作権が発生する制作物には、文学、音楽、絵画、写真、映画など、多岐にわたる創作物が含まれます。具体的には、独自性のある表現が含まれている作品が対象となります。これには、Webサイトのデザインやコンテンツも含まれます。

権利の制限

もし、他人の制作物を利用したい場合は、著作者から承諾を得ることが原則となります。一方で、著作権法には、公益性の高い使い方であれば、権利制限規定によって、一定の著作物の利用が認められる規定があります。 権利制限規定に該当する場合は、著作権者からの承諾を受けなくても著作物を利用できます。

権利制限規定一覧(著作権侵害とはならない)

  • 自分が利用するために複製する
  • 引用するために利用する
  • 学校やその他の教育機関で利用するために複製する
  • 非営利や無料、無報酬での上演などに利用する

 

生成AIの仕組み

次に、どのようにコンテンツ生成が行われているのか、生成AIの仕組みについてご説明します。

生成AIとは

生成AI(Generative AI)は、学習用データを収集し、ユーザーの入力した命令文に応じて新たなデータを生成する人工知能の一分野です。生成できるコンテンツは文章や画像、音楽、データ分析など、多岐にわたります。

今までのAIとの違い

AIという言葉は、生成AIが広く利用されるよりも前から使われてきました。では、今までのAIと生成AIでは何が違うのでしょうか。

最も大きな違いは目的と機能です。従来のA Iは既存のデータをもとに分類、予測、識別などのタスク(スパムメールの検出や画像認識など)を行います。対して生成AIは新しいデータやオリジナルコンテンツを生成することに焦点を当てています。これにより、クリエイティブな作業や新しいデータセットの作成が可能になります。

これまで、0から1を生み出す作業は人間にしかできないといわれていましたが、生成AIの登場によってアイデアの創出はもちろん、データ分析やコンテンツ生成まで、より高度な作業を自動化できるようになりました このような自動化を実現するのに役立っているのが、機械学習モデルと大規模言語モデルの存在です。

基盤モデルと大規模言語モデル

基盤モデルとは、人工知能(AI)分野において、多様なタスクに対応可能な広範な能力を有する大規模な機械学習モデルのことです。この機械学習モデルは、大量のデータを用いて事前学習し、特定の状況に応じて微調整することで、様々な具体的なタスクを遂行できます。

一方で、大規模言語モデルは、文章の要約や文章生成、データの分類、自由な会話、レポーティングなどを得意としており、多様なタスクを遂行できます。

生成AIモデルの仕組み

今までの機械学習モデルでは、すでに分かっている事柄からまだ分からない事柄を推測することを行っていました。 生成AIは、これよりも先を進んでいます。特定の特徴が与えられた状況下で何かしらの物事を推測するのではなく、特定の物事が与えられた状況下で特徴を推測しようとします。

ここで、わかりやすい具体例を提示します。 たとえば生成AIは植物を画像分析して、様々な色や形などの変数を記録していきます。それぞれの植物の特徴や関係性を学習し、様々な植物が一般的にどのような形をしているのかを理解します。これにより、新しい植物の画像を生成できるようになります。

 

 

生成AIの成果物に著作権は発生するか?

先ほど著作権の基本と生成AIの仕組みについて学んできましたが、成果物に著作権が発生するのかという視点で具体的に考えていきます。

生成AIが他人の著作物を学習するのは著作権侵害?

全ての著作物に対して著作権が認められるのであれば、生成AIが他人の著作物を学習する行為はAIによる著作権違反ではと思う方もいるかもしれません。実際に、一部のクリエイターや素材提供業者は創作物を生成AIの学習に利用することを禁止しています。

著作権法に則った解釈では、著作物はその著作物に表現されている感情や思想を自分で享受し、または他人に享受させることを目的としない場合は、必要性が認められる限度で、原則として著作権者の承諾なく利用できます。生成AIの学習は非享受目的の利用になるため、原則として著作権者の承諾なく行うことが可能です(著作権法第30条の4(平成30年改正))。

この著作権法第30条の4は、平成30年の改正前は学習用データとしての利用にも原則として著作者の許諾が必要とされていましたが、AIが数十億にも及ぶ大量の学習用データについて個別に著作者へ許諾を得ることが困難で非現実的であるという課題から平成30年に改正されました。

 

著作権法 第二章 著作者の権利 第五款 著作権の制限

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)

第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合

二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合

三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

 

ただし、学習データの影響を強く受けた生成物を出力する目的で著作物を複製することは違法となる可能性があります。このことは著作権侵害の判断基準「類似性」と「依拠性」についての段落で後述します。

生成AIの成果物の著作者は誰になる?

生成AIの技術によって素晴らしい画像を作成できた場合、この成果物の著作者は誰になるのでしょうか。

生成AIが生成した成果物の著作権については、生成AI自体が著作者となることはありません。通常、生成AIの使用者が成果物の著作権を主張することが多いですが、その際の法的根拠は現在のところ明確ではありません。生成AIの開発者、提供者、利用者の間で、著作権の帰属について明確な取り決めをすることが課題となっています。

生成AIの成果物に著作権は発生する?

では、AIに生成された文章や画像に著作権があると認められるのはどのような場合でしょうか。判断基準は、作成過程において、人の意思や感情が含まれているかどうかです。たとえば、生成AIで文章や画像を作成するには、命令文を考える必要があります。この命令文には創作性があり、一定の意思や感情が認められることがあります。

実際に文化庁の「AIと著作権に関する考え方について(素案)」では、AI生成物の作成過程において、創作物表現といえるものが具体的にある場合は、著作権があると評価できる可能性が高いと考えられると示されています。

著作権侵害の判断基準は「類似性」と「依拠性」

著作権侵害の判断基準には、「類似性」と「依拠性」があります。生成AIが出力したコンテンツが既存の著作物と類似している場合、著作権侵害とみなされる可能性があります。また、生成AIがその著作物に依拠していると判断される場合も、著作権侵害となる可能性があります。

類似性とは、生成AIが作成した成果物が他人の著作物とどの程度似ているかを評価する基準です。見た目、内容、構成などが著作権で保護されている既存の作品とどの程度一致しているかを判断します。例えば画像の場合はAIで生成した「画像B」が、既存の「画像A」と同じ構図、色使い、背景、キャラクターの配置・ポーズが使われている場合、「画像B」は「画像A」と類似していると判断されます。

依拠性とは、生成AIが作成した成果物が、どの程度既存の著作物を基にしているかを評価する基準です。つまり、生成AIが既存の著作物を参考にしているか、あるいはそれを元にしているかを判断します。

例えば、2023年には生成AIが執筆した手塚治虫の有名漫画「ブラックジャック」の新作が週刊少年チャンピオンに掲載されました。これは手塚治虫作品の著作権を管理している手塚プロダクションの許諾・協力のもとに制作されたものなので問題はありません。制作の過程では手塚治虫の画風や登場人物の人格・既存作のストーリーを学習させ「手塚治虫のブラックジャックの新作」として、AIに生成させたデータをもとに制作されました。このような場合、既存の著作物に依拠性があると判断されます。このような制作物を自身の著作物として公開する場合には、原作者の許諾が必要です。

生成AI利用者が著作権侵害にならないために注意すべきこと

とはいえ、「類似性」と「依拠性」はどの程度なら許容範囲なのか明確な基準はないのが現状です。最終的には個別事案ごとに裁判で判断されるしかありません。しかし、世の中にある全ての創作物を知っているわけではないので、意図せず似ている物を作ってしまう可能性も十分にあります。そのため、生成AIで画像や文章を生成する場合は、次の点に注意してください。

  • 生成AIへの命令文に既存の作家名・作品タイトル・キャラクター名などを入力しない
  • 生成AIへの命令文に、許諾を得ていない著作物をimage2imageで入力しない
  • 著作権法に則って適切に開発された生成AIツールを利用する
  • 生成したコンテンツをそのまま掲載するのではなく、素材の一つとして加工して利用する
  • 一般的に常識を疑われるような道徳性に欠けた利用をしない
  • 公開前に、類似のコンテンツがないかチェックをする
    文章の場合はコピペチェックツール、画像の場合はGoogleの画像検索で類似コンテンツがないか確認。

 

Google画像検索での類似性チェック
Google画像検索を利用した類似画像のチェック。作成した画像をアップロードすると類似している画像が表示されます。

 

既存のコンテンツの無断使用は、著作権侵害となり裁判を起こされるリスクがあります。少しでも類似性があると思う場合は、裁判リスクを抑えるためにも無断使用はやめておきましょう。

生成AIに限らず、道徳的に考えて既存の画像と似ている画像を自社の創作物として掲載するべきではないでしょう。法律以前に、企業倫理を疑われるのでやめるべきです。

 

生成AIで著作権侵害が発生した事例

生成AIの著作権侵害による裁判は、すでに起きています。ウルトラマンシリーズの著作権を有する「円谷プロダクション」(東京)から、作品の複製ライセンスを受けた中国企業が生成AIでウルトラマンとよく似ている画像が生成できるのを発見しました。

そのため、AIサービス事業者が許可なく画像生成させたとして、損害賠償を求めて提訴し、その訴えを受理しています。裁判所は、AIサービスの事業者に約20万円の損害賠償と画像の生成防止を命じる判決を下しています。

 

日本の有名アニメキャラクターも!?生成AIアニメの著作権侵害

日本経済新聞の調査によると、AIの生成画像を共有するサイトでピカチュウやマリオなどの有名キャラクターと類似性の高い画像が約2500枚見つかりました。そのうちプロンプトにキャラクター名が入力されていた画像は9割にのぼり、意図的に原作に似せたことは明らかです。(日本経済新聞 2024年6月7日)

プロンプトにキャラクター名を入力して画像を生成することは、先に述べた著作物の「依拠性」にあたります。個人で楽しむだけであれば問題ありませんが、画像共有サイトや自身のSNS・Webサイトなどで公開することは著作権侵害となる可能性が高いです。

参考サイト:https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/ai-anime/

 

海外での生成AIに対する法整備

生成AIへの法規制は海外でも国や地域によって様々です。

アメリカの著作権法(著作権法第107条)ではフェアユースという概念が規定され、特定の条件下で著作者の許可なしに著作物を利用することが認められます。利用の目的が教育や研究、批評、報道などであれば、フェアユースと認められやすいです。また、生成AIを用いて元の作品を批評したり、パロディ作品を作成したりする場合も、フェアユースとして認められることがあります。違法か合法かの最終判断は裁判所が下すため、AIの学習用に許可なくコンテンツを使用されたとしてAI開発企業が訴えられる事例も少なくありません。(例:米NYタイムズ、OpenAIを提訴 記事流用で数千億円損害

EUでは著作権指令(Directive on Copyright in the Digital Single Market)が2019年に施行され、デジタル時代における著作権保護を強化するための指針を示しています。ユニークな点はプラットフォームの責任強化です。オンラインプラットフォームは、ユーザーがアップロードしたコンテンツが著作権侵害をしている場合、一定の責任を負うこととなりました。これにより、生成AIを活用するプラットフォームも、著作権侵害を防ぐための措置を講じる必要があります。また、クリエイターや著作者に対する公正な報酬の確保が強調されており、生成AIによって生成されたコンテンツが商業的に利用される場合も、元の著作者に対する適切な報酬が求められることがあります。

 

まとめ

生成AIは、Webサイト制作において非常に有用なツールですが、その利用には著作権の問題が伴います。生成AIの成果物の著作権や、学習データの利用に関する法的問題について理解し、常に新しい情報をキャッチアップする必要があります。

日々進化する生成AI技術に伴い、法整備も変化していくため、最新の情報を注視する必要があります。生成AIを効果的に活用するためには、法的なリスクを理解し適切な対応を取ることが求められます。

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