ノーコードツールの特徴をわかりやすくご紹介
2024.08.23 Posted by takahashi.m
技術的なスキルがなくても、誰でも簡単にアプリケーションやWebサイトを作成できる「ノーコードツール」が注目を集めています。ノーコードツールが知名度を高めている一方で、ローコードツールの提供会社も増えています。ノーコードツールとローコードツールがある場合、どちらを利用するべきなのでしょうか。
また、ノーコードツールという名称のイメージから「実務で使えるようなWebサイトは制作できないのでは?」と思っている方もいるでしょう。最近のノーコードツールは、クオリティのレベルが高く、たくさんの有名企業が利用し、Webサイトを運営しています。この記事では、ノーコードツールとはいったいどのようなものなのか、その特徴やローコードツールとの違い、実際のノーコードツールの制作事例についてわかりやすく解説します。
ノーコードツールとは
ノーコードツールとは、プログラミングの知識がなくても、アプリやWebサイト、データベースなどを簡単に作成できるソフトウェアのことです。通常、ドラッグ&ドロップやテンプレートを使って直感的に操作でき、技術者でなくてもシステムや工程の自動化、デジタル製品の作成が可能です。これにより、非技術者でも迅速にプロジェクトを進めることができます。
一方ローコードツールは、必要最小限のソースコードで高度なカスタマイズや開発が可能となります。ローコードツールでは、ドラッグ&ドロップの要素に加えて、スクリプトやコードの挿入もできるため、技術者はより自由な設計や機能の追加ができます。 ローコードツールとノーコードツールの詳しい比較は後半で紹介します。
ノーコードツールが注目を集める理由
ノーコードツールは、次のような要因によって注目を集めています。
時間短縮
ノーコードツールを使用すると、複雑なアプリケーションやWebサイトを短時間で開発できます。プログラミングやコーディングが不要なため、アイデアを迅速に具現化し、製品の市場参加までの時間を大幅に短縮できます。
コスト削減
ノーコードツールを使えば、開発コストが大幅に削減されます。専門的な開発者を雇う必要がなく、中小企業でも自分たちで開発が可能になります。これにより、特にスタートアップや中小企業にとって大きな経済的メリットがあります。
誰でも簡単に利用できる
ノーコードツールは、技術的な知識がない人でも直感的に使える設計となっています。これにより、非技術者もアプリ開発やデジタルプロジェクトに参加できます。
ノーコードツールの市場が急成長している背景
現在、ノーコードツールの市場は急成長しています。この成長の背景は、以下の要因によるものです。
IT人材の不足
世界的にIT人材の不足が深刻化しており、企業は限られた技術者で膨大なデジタルプロジェクトを遂行する必要があります。ノーコードツールはこの問題を解消する手段として注目され、IT部門以外のスタッフでも開発業務を担えるようにしています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の活発化
多くの企業が売上を維持するために、業務のデジタル化を推進しています。DXの一環として、ノーコードツールは、迅速にデジタルプロジェクトを立ち上げるための鍵となっており、多くの業界で採用が進んでいます。
迅速性の高い開発への需要
企業は市場の変化に迅速に対応する必要があり、そのために高い開発力が求められています。ノーコードツールは、開発プロセスを加速させ、迅速に新しいソリューションを提供する能力を有するため、利用者が増え続けています。
市場規模の推移
ノーコードツール市場は今後も成長が予測されており、特に中小企業のデジタル化が進む中で、その需要はさらに高まると考えられています。複数の調査会社のレポートによると、ノーコードおよびローコード開発プラットフォームの市場は年平均成長率(CAGR)が20%を超えるペースで拡大しているというデータもあります。
これらの要因から、ノーコードツール市場は急速に拡大し、今後もその成長が続くと予想されています。
ノーコードツールが注目を集める業界
ノーコードツールは、さまざまな業界で注目を集めており、その利便性により多くの企業が採用しています。次に、特にノーコードツールが注目されている業界と、その理由について詳しく説明します。
金融業界(フィンテック)
金融業界では、ノーコードツールが特に注目されています。フィンテック企業や伝統的な従来型の金融機関は、迅速に新しいサービスを開発し、市場参加する必要がありますが、これには高い技術力とタイムマネジメントの能力が求められます。しかし、そのような場合にノーコードツールを使用することで、以下のようなメリットがあります。
- 迅速なプロトタイピングとテスト:新しい金融商品やサービスのプロトタイプを迅速に作成し、市場でテストできる
- カスタマイズ可能な顧客ポータルを作成:ノーコードで顧客向けのポータルやダッシュボードを構築し、ユーザーエクスペリエンスを向上できる
- コスト効率の高い開発の実現:開発コストを抑えつつ、柔軟に機能を追加・変更できる
教育業界
教育業界は、ノーコードツールの恩恵を大いに受けています。特に、オンライン教育の需要が急増する中で、ノーコードツールは教育機関にとって重要なツールとなっています。
- オンライン学習プラットフォームを作成:簡単に学習管理システムを作成し、コースをオンラインで提供できる
- カスタマイズ可能な教育アプリ:学生の要望に合わせたカスタマイズ可能な教育アプリを開発し、インタラクティブな学習を促進できる
- データ分析ツール:学生のパフォーマンスデータを分析するツールを作成し、学習成果を可視化できる
不動産業界
不動産業界でも、ノーコードツールが注目されています。特に、不動産管理や顧客対応を効率化するために利用されています。
- 物件管理システム:物件の情報を一元管理するシステムをノーコードで構築し、業務効率を高める
- バーチャルツアーアプリ:物件のバーチャルツアーを簡単に作成し、遠隔地の顧客にもリアルな体験を提供している
- 顧客管理(CRM)システム:顧客とのコミュニケーションを効率化し、営業活動をサポートするためのCRMシステムを作成できる
これらの業界では、ノーコードツールを利用することで、迅速な開発、コスト削減、そして業務の効率化を実現できます。特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中で、ノーコードツールはさまざまな分野でのイノベーションを促進し、今後さらにその重要性が増していくと考えられます。
ノーコードツールとローコードツールの違い
ノーコードツールとローコードツールのそれぞれの違いは次のとおりです。
ノーコードツール
ノーコードツールは、その名の通り「コードを必要としない」開発ツールです。これにより、プログラミングの知識がない人でも、直感的な操作でアプリケーションやWebサイトを作成できます。次に、それぞれの特徴をまとめていきます。
【プログラミング不要】
ノーコードツールは、全くコードを書く必要がありません。ユーザーは、ドラッグ&ドロップ機能を使って、パーツを配置し、設定を行うことでアプリケーションやWebサイトを構築できます。このため、技術的なバックグラウンドがないユーザーでも、簡単に使いこなすことができます。
【カスタマイズ範囲が限られる】
ノーコードツールは、提供される機能やテンプレートに依存するため、カスタマイズの自由度が低いです。あらかじめ用意された機能やデザインを利用することで迅速に開発できますが、独自の複雑な機能を追加するのは難しいことがあります。
【対象ユーザー】
ノーコードツールは、非技術者や開発予算が限られている小規模プロジェクト向けに設計されています。スタートアップや中小企業、個人事業主が短期間でプロトタイプを作成する際に特に有用です。
【開発スピード】
ノーコードツールを使用すると、通常、短期間でアプリケーションを開発できます。特に、限られた時間で迅速に製品を市場参加させる必要がある場合に効果的です。
【プロジェクト規模】
ノーコードツールは、小規模なプロジェクトやシンプルなWebサイト、アプリケーションの開発に適しています。大規模で複雑なシステム開発には不向きですが、初期段階での開発や簡単な業務ツールの作成には最適です。
【ツールの具体例】
- Studio
https://studio.design/ja
Studioは、デザイナー向けに設計されたWebデザインツールです。ノーコードツールでWebサイト制作といえば「Studio」といわれるほど、有名なツールで視覚的なデザインに重点を置いており、直感的なUIでWebサイトのデザインから公開までを簡単に行えます。HTMLやCSSの知識がなくても、美しいWebサイトを作成できます。まずは、これでWebサイト制作をやってみましょう。 - Wix
https://ja.wix.com/
Wixは、豊富なテンプレートとアプリマーケットを提供するWebサイトビルダーです。HTMLテンプレート900 種類以上が無料で使えるので、幅広いパターンへの対応が可能です。ドラッグ&ドロップでWebサイトを構築できるため、技術的な知識がないユーザーでもプロフェッショナルなWebサイトを短期間で立ち上げることが可能です。 - Webflow
https://webflow.com/
Webflowは、デザインと開発を統合したプラットフォームで、デザイナーやマーケターがコーディングなしで高度なWebサイトを構築できます。ビジュアルエディタとともに、コードも自動生成されるため、ノーコードツールとしての柔軟性と、プロ仕様のデザインが可能です。ただし、こちらのツールは英語なので上記2つと比べると扱いが難しいです。
ローコードツール
ローコードツールは、ノーコードツールと比べて、一定のコーディングが必要となる開発ツールです。ドラッグ&ドロップのような直感的な操作と、必要に応じてコードを追加することで高度なカスタマイズや独自機能の実装が可能です。
【最小限のコードが必要】
ローコードツールでは、ドラッグ&ドロップによる直感的な操作が中心ですが、特定の機能や複雑な処理を実装するためにはコードを追加する必要があります。これにより、ノーコードツールよりも柔軟性が高くなります。
【高度なカスタマイズが可能】
ローコードツールは、カスタマイズの自由度が高いのが特徴です。標準で提供されるコンポーネントや機能を基にしつつ、独自のコードを追加することで、企業固有のニーズに合わせたアプリケーションを開発することができます。
【対象ユーザー】
基本的なプログラミングスキルを持つ開発者や、技術的なチームが対象です。非技術者でも利用可能ですが、より複雑なカスタマイズや大規模なシステム開発を行う場合は、開発者の協力が不可欠です。
【開発スピード】
ノーコードツールと比較すると、ローコードツールでは開発に若干の時間を要しますが、その分、柔軟性と機能拡張性に優れています。これにより、より複雑な要件を満たすことができ、長期的なプロジェクトにも対応可能です。
【プロジェクト規模】
ローコードツールは、ノーコードツールよりも大規模で複雑なプロジェクトに適しています。エンタープライズ向けのシステム開発や既存のITインフラとの統合を必要とするプロジェクトでも効果的に使用できます。
【ツールの具体例】
- Microsoft Power Apps
https://www.microsoft.com/ja-jp/power-platform/products/power-apps
Microsoft Power Appsは、ビジネスアプリケーションを迅速に開発できるローコードツールです。マイクロソフトのエコシステムとのシームレスな統合が可能で、既存のデータやシステムを利用して、業務プロセスを自動化できます。 - OutSystems
https://www.outsystems.com/ja-jp/
OutSystemsは、エンタープライズ向けのローコードプラットフォームで、大規模なシステム開発や高度なカスタマイズが可能です。アプリケーションのライフサイクル全体を管理でき、複雑なビジネスプロセスにも対応します。 - kintone
https://kintone.cybozu.co.jp/
kintoneは、企業向けの業務アプリケーションを構築できるプラットフォームです。ドラッグ&ドロップでカスタムアプリを作成できるだけでなく、必要に応じてコードを追加し、業務に特化したアプリケーションを開発できます。
どちらのツールを使うべきか
ノーコードツールは、次のような方におすすめです。
- コーディングスキルがないユーザーが、自らアプリやWebサイトを作成したい場合(スタートアップが自社製品の拡散力を高める)
- プロトタイプを短期間で開発し、市場テストを行いたい場合(スタートアップがアイデアの検証のために素早く製品を公開する)
- コーディングスキルがないユーザーが、自らアプリやWebサイトを作成したい場合(スタートアップが自社製品の拡散力を高める)
- 限られた予算で、小規模なプロジェクトを迅速に進めたい場合(社内で使用する簡単なアプリを作成する)
一方で、ローコードツールは、次のような方におすすめです。
- 技術者が一定数いるチームで、カスタマイズや複雑な機能が求められるプロジェクトの場合(企業が既存のシステムに統合するための専用アプリを開発する)
- 既存のシステムとの統合や、独自のビジネスプロセスを自動化する必要がある場合(企業のCRMやERPシステムと連携させた業務アプリを開発する)
- コーディングスキルがないユーザーが、自らアプリやWebサイトを作成したい場合(スタートアップが自社製品の拡散力を高める)
- 将来的にスケールアップが見込まれる大規模なプロジェクトの場合(大企業が長期的なシステム開発計画の一環としてローコードツールを採用する)
このように、ノーコードツールとローコードツールのどちらを選ぶべきかは、プロジェクトの規模、要求される機能、そしてチームの技術に応じて決定することが重要です。以下は、ノーコードツールとローコードツールの違いをまとめた比較表です。
項目 | ノーコードツール | ローコードツール |
---|---|---|
プログラミングの必要性 | なし。ドラッグ&ドロップで作成可能。 | 最小限のコーディングが必要。ドラッグ&ドロップの直感的な操作を基本にコードで拡張可能。 |
カスタマイズの自由度 | 限定的。提供される機能やテンプレートに依存。 | 高度。独自機能の追加や複雑なカスタマイズが可能。 |
対象ユーザー | 非技術者、小規模プロジェクト向け。 | プログラミングスキルを持つ開発者や技術チーム、大規模プロジェクト向け。 |
開発スピード | 非常に早い。短期間での開発が可能。 | ノーコードよりやや時間が必要だが、柔軟性が高く複雑な開発に対応。 |
プロジェクト規模 | 小規模プロジェクト向け。大規模や複雑なシステム開発には不向き。 | 大規模かつ複雑なプロジェクトにも対応可能。 |
具体例 | Studio Wix Webflow |
Microsoft Power Apps OutSystems kintone |
主な使用シナリオ | 小規模ビジネス、簡単なWebサイトやアプリケーションの作成 | エンタープライズシステム、複雑な業務アプリケーションの開発、システム統合。 |
コスト | 低コスト。簡単なプランでも十分に利用可能。 | 一般的にノーコードより高コスト。複雑なプロジェクトや長期的な開発に最適。 |
技術的サポートの必要性 | ほとんど不要。初心者でも直感的に利用可能。 | 技術的なサポートが必要。開発者が一定のスキルを持つことが望ましい。 |
ノーコードツールの制作事例
実際にノーコードツールを利用した企業やプロジェクトの制作事例を簡単にご紹介します。
住信SBIネット銀行の事例 (STUDIO使用)
会社名:住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行は、STUDIOを利用して、顧客向けのガイドサイトを構築しました。このプロジェクトでは、STUDIOの直感的な操作性を利用し、ユーザーフレンドリーなデザインと使いやすさを実現しています。特に、コンテンツの更新やページの追加が容易にできるため、金融業界のような厳しい規制の中でも、迅速な対応が可能となっています。
内定者アルバイトの方がプロジェクトに参加し、合計1週間程度で実装できたとのことなので、非常に参考になる制作事例です。
(参照:https://studio.design/ja/customer-story/netbk
凸版印刷株式会社の事例 (Webflow使用)
会社名:凸版印刷株式会社
凸版印刷株式会社は、Webflowを利用して、TGVPのWebサイトを作成しました。Webflowのビジュアルエディタを使用することで、高度なデザインとアニメーションをコーディングなしで実現しています。このWebサイトは、企業のビジョンとサービスを効果的に伝えるために作成され、Webflowの柔軟性とデザイン力が存分に発揮されています。
最初は、新デザインを3種類作成し、その中からクライアントに選んでもらい、現在の形態になっているとのことです。落ち着いた背景色は、ユーザーに信頼感と安心感を与えてくれます。
(参照:https://www.likepay.jp/webflow-development/projects/tgvp
まとめ
ノーコードツールやローコードツールは、企業や個人が迅速で効率的にWebサイトやアプリケーションを開発するために重要な選択肢となっています。ノーコードツールはプログラミング不要で、直感的な操作が可能なため、小規模プロジェクトや技術者が少ないチームに最適です。制作事例として、住信SBIネット銀行はSTUDIOでガイドサイトを作成し、凸版印刷はWebflowでTGVPのWebサイトを制作しました。
一方、ローコードツールは最小限のコーディングで高度なカスタマイズが可能で、大規模なプロジェクトに適しています。
どちらのツールを選ぶべきなのかについては、プロジェクトの内容や目標に応じて正しく選ぶことが重要です。
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