クオリティの高い仕事が、クオリティの高いサービスではない
2010.06.07 Posted by 山浦 仁
『プロフェッショナル・サービス・ファーム』
知識創造企業のマネジメント
(著) デービット・マイスター
(訳) 高橋 俊, 博報堂マイスター研究会
(東洋経済新報社)
プロフェッショナル・サービス・ファームというと、マッキンゼーのようなコンサルティング会社やアーサーアンダーセンのような会計事務所を思い浮かべますが、アメリカではその範囲は、会計事務所、アクチュアリー、建築家、コンサルタント、エグゼクティブ・サーチファーム、人材紹介業、法律家、PRファーム、広告会社、エンジニアリング、資産運用機関、投資銀行、不動産業などと多岐にわたるそうです。
そういった企業はもちろんのこと、この本は当社のようなWeb制作会社だけでなく、例えば住宅リフォームのような、人的サービスが重要な全ての企業にとって、参考になる本ではないでしょうか。
本書の主要なテーマは、プロフェッショナル・サービス・ファームの将来を確かなものとするため、次の2つの資産を賢く管理することが必要であるということに尽きる。
a.スキル・才能・知識・能力の在庫
b.クライアントとの関係・クライアントの評価における強み
損益計算書で良い結果をあげることはファームの成功に必要だが、それだけでは十分ではない。良い結果を出した年度だと判断されるためには、扱い高や利益目標を成し遂げるといったことだけでなく、新しいスキルを積み上げ、クライアントとの関係性を高めるということも必要である
それを実現するために、資産管理アプローチ手法やマネージメントプロセス等、具体的な示唆に富む内容となっています。
例えば・・・
- 権限委譲の問題
- クライアントへの請求時間外における新規プラクティス開発
- クライアントニーズの把握と事後評価の方法
- クライアント満足の高め方とその管理
- 既存クライアントに対するマーケティング
- 新規クライアント獲得のためのマーケティング
- プロフェッショナル個人の成長・キャリアデザインの問題
- パートナーへのコーチング
- プロフェッショナルの採用と動機付け
- マネージャーの役割
- 戦略立案の方法
- アクションプランの構築 etc
クライアントからのフィードバック質問表における質問項目などは、そのまま使えてしまえそうです。
基本的には、そこで働く人というよりは、経営者やマネジメント層向けの本ですが、13章の「プロフェッショナルとしての資産状況は?」は、経営者かそうでないかに関わらず、プロフェッショナルならば意識していなければならないことです。
これから社員が増えていく中で、長期的にどのように組織をデザインし、どのような企業文化を創り上げていくか模索している中で、相当参考にさせていただこうと思っています。
ちなみに今、会社の組織化という課題に関心がある私が一番印象に残った言葉はこれ↓
戦略立案の仕事は、未来を予測することではない。目指すところは、反応の良い組織をつくりだすことにある。さらに、一過性の調査ではなく、常に変化する市場の動向にプラクティス担当者が着目し続ける業務執行の手順を定めることである。加えて、プラクティス担当者自らの業務の方法論について、改善の可能性を求める批判的な視点から、定期的に見直しを行うことを義務付けることである
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