Webサイト上の統計データ、4つのチェックポイント
2015.08.26 Posted by anzai
「統計学が最強の学問である」という、センセーショナルなタイトルの本が流行ったのを覚えていますか。果たして「最強」かどうかはともかく、私達が業務上何かしらの企画・提案・評価を行う上で、客観的な指標となる統計データがとても重要であることは疑いようもありません。データがある場合とない場合では、その説得力に天と地ほどの差が表れてしまいます。
しかし、統計データはとてもセンシティブ(鋭敏)なものです。少しでも取り扱い方を間違えるだけで、説得力を増すどころか、かえって恥をかかされることだってあります。とにかくグラフを添えれば良い!なんて姿勢で統計データを扱うことはとても危険です。
今回は、特にWebサイトに掲載されている統計データを扱ううえで気をつけるべきことについて見ていきましょう。WEB上では多くの統計データを閲覧することができますが、そのデータが果たして引用するに値するかどうか、玉石混交の中からしっかりと見定める必要があります。
出所(ソース)をチェック
最も基本なのは情報の出所です。大げさな例を出してしまえば、大手リサーチ会社が行った調査と、身の回りの友人に聞いてまわった個人調査では、信頼度も違ってきますよね。
一概に「大手ならOK、個人調査はNG」というわけではありませんが、信頼に足る出所(ソース)なのかどうかはしっかりとチェックしておく必要があります。
調査時期をチェック
次に注意を払うべきは調査の時期です。WEBやインターネットに関する調査は、年によって結果が大幅に変化する場合が少なくありません。例えば2015年現在、「2010年のデータによると・・・」などと引用してしまった場合、「最新の調査だと変わっているのでは?」なんて指摘を受けてしまう可能性もあります。
定期的に継続して行われる調査である場合、しっかり最新のデータをフォローするようにしましょう。間違っても「古いデータの方が自分の主張にとって都合がよいから」という理由で引用してはいけません。高い確率で、泣きを見ることになってしまいます。
また、念の為補足しておくと、古いデータに価値がないというわけではありません。基本的に統計とは2つ以上のデータとの比較により考察を見出す取り組みです。何十年も前から継続的に調査されているデータであれば、その傾向についても観察することが出来るため、かえって非常に有用な統計データといえます。
調査方法をチェック
さて、ここで休憩がてら、一つ笑い話をご紹介しましょう。
ある調査会社が10代~90代、合計1,000人を対象に「インターネット利用率」を調査しました。すると驚くべきことに利用率は100%を記録、全年齢・全対象者が「インターネットを利用している」と答えました。
一体なぜでしょうか。お分かりですよね。それはこの調査がインターネット上のWebサイト(アンケートサイト)を通して行われたものだったからです。インターネットユーザーに対してインターネット利用の可否を聞けば、みんなイエスと答えるに決まっていますね。
この話はジョークの1つですが、実際このケースに近い調査は少なくありません。特定の結果を導き出すため、意図した方法や対象を選んで行われた調査が、残念ながら存在するのです。
こういった恣意的な調査では、何の裏付けにもなりません。正しい調査方法が取られているか、正しい調査対象が選ばれているかは、統計データを評価する上で最も重要なチェックポイントです。
正しい手続きで調査が行われている場合、調査報告の冒頭に、方法について掲載されています。調査方法についてきちんと記載がない場合は、疑ってみたほうが良いでしょう。
統計のマジックをチェック
統計はしばしば、見かけ上の嘘をつきます。私達が統計データを「客観的に正しい」と信じて疑わないからこそ、その裏で多くの勘違いを見逃してしまいます。それらは統計のマジックと呼ばれたりします。
最も有名な例は「平均値マジック」でしょうか。
家庭の貯蓄額を例に出しましょう。金融広報中央委員会が2014年に発表した「家計の金融行動に関する世論調査」によると、2人以上世帯の平均貯蓄額はなんと1,182万円だそうです。これは驚くべき数値ではありませんか?
「1,182万円なんて、そんなにみんな貯金しているのかあ、、、」
と途方に暮れる必要はありません。事実、ほとんどの人はそれだけの貯蓄を持っていません。
これは「平均値」が魔法になる好例です。100人の集団のなかで、1人の大金持ちが1億円の貯蓄を持っていたとしたら、例え99人が100万円の貯蓄額だとしても、計100人の平均貯蓄額は199万円になります。「100人中1人しか平均貯蓄額を超えない」という現象がたやすく起こるのです。
それでも「平均貯蓄額」といわれると、およそ半分程度の人がその額を持っているような気がしますよね。数字は嘘をつかないと思えば思うほど、私達は簡単にだまされてしまうのです。
統計データに踊らされないようにしよう
自分の主張や提案に都合の良いデータを見ると、ついつい引用してしまいたくなるのが人の性(さが)です。そんなときこそぐっとこらえ、それが本当に客観的で価値のあるデータなのかどうか吟味し、正しく引用する習慣を心掛けましょう。
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